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第1話 私立探偵ボブ

第1話 私立探偵ボブ

 

Hi.

ボクは私立探偵のボブ。葉巻が好きだ。

今日も難事件を追って、我が庭ともいえる北九州を走り回っている。相棒は元キャッツアイのキャシー。覚えやすいだろ?

 

北九州の風はいつだって正直だ。

曇天の下を悠々と吹き荒び、血なまぐさい事件を運んでくるのサ。

 

ほら今日も、お客さんだ。

 

ボクがダーツの矢をブルにキめるのと同時に、我が探偵事務所の扉が開いた。

 

「すみません。」

 

キョドキョドしながら3人の若者たちが入ってきた。そわそわと落ち着かないようにお互いの顔を見ていたので、椅子に座るように促す。しかし、座ってもなかなか本題に入ろうとしない。

 

「ah ここは……ハハ、取調室か何かかい?」

 

ボクの小粋なジョークも、から笑いで流された。まったく最近の若いやつらは。

 

「事件がないなら帰ってくれないかね。」

 

ボクもあいにく暇じゃないんだ。

そう睨むと、真ん中に座っていた丸メガネの青年が慌てたように口を開いた。

 

「あっ、すみません。えっと、事件はあるんですけど、その前に、えっと」

「いくらなのかなって」

 

右側に座っていたショートカットの女性が助け舟を出す。

 

「いくら?」

「あ、値段です。相談料。」

「あー、モノにもよるが。なんだい、金がないのかい。」

 

そういうと、なんとも気まずそうな顔をされた。貧民か……。

 

「とりあえず話を聞かせてくれたまえ。金も何も、どんな事件がわからないんじゃ決めようがない。」

 

そういうと、3人の若者はようやく事件について話し始めた。

 

「僕たち劇団をやってるんですけど。」

「うちの劇団の代表が、積立金を持って蒸発したんです。」

「なんて劇団なんだい?」

「ハコベラです。」

 

空いていた窓から風が吹き込む。ホコリがまった。いけない、最近掃除をサボり気味だったかな。

しかし、ハコベラ、か。なるほどな。

 

「それで、最後にアイツ、アオキっていうんですけど、アオキが残したと思われるメモがあって……これです。」

 

そう言って手渡されたメモには次のように書いてあった。

 

(だーまえ)

 

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