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ありがとう平成(愛里)

4/17

東京にきて一年ほど経ちました。
上京したばかりのときは、引っ越しにお金を使ってしまってお金もなく、あらゆる支払いを滞納し、もちろん年金も払っていませんでしたが、今月から社会保険に入り、厚生年金を払います。成長したな、と思いました。

職場で、健康診断にまだ行かないのか、と詰問されました。今月から契約社員になったので、入社に際しての健康診断に行かないといけないのです。

しかし、健康診断を受ける際に発生するお金はまず自分で立て替えなければならず、公演直後だったわたしはお金がなく、健康診断に行けませんでした。

その旨を伝えると、それを聞いていた新人さんが「お金、すぐ返ってきたから大丈夫でしたよ」と私に言いました。

きっと新人さんは、まさか全財産が1万円も満たない大人なんていないと思い、心遣いで言ってくれたのだと思います。

しかしわたしは、幻の全財産が1万円に満たない大人でした。

「その、建て替える金がまずないんスよねぇ〜〜〜」

わたしは消え入るような声で、ヘラヘラと答えました。

珍しい動物を目の前にしたような顔をする新人さんをみて、わたしは一年前となにも変わっちゃいないな、と苦々しく思いました。

健康診断は来月の10日まで待ってもらえることになりました。よかったです。
 


4/26

3年前に、ミスid 2017というオーディションを受け、ファイナリストまで残らせていただいたのですが、その、ミスid の審査委員長、小林司さんが高級な焼肉を奢ってくれました。

小林さんは、ミスid のときの最終面接で「売れたいならグラビアをすればいい」と言ってきた人です。わたしはそのとき、「グラビアはやりません」と言いました。


実際沢山話して見ると、いままで出会った大人の中で一番おしゃれで、センスがかっこよくて、余裕があってお金もあって優しい、素晴らしい人でした。

小林さんがおすすめの、牛のベロそのまま出してきたんか、くらい分厚い牛タンを、小林さんが「ハコベラ、本当によかったよ」と言いながら焼いてくれました。その姿を生ビールを飲みながら眺めました。
わたしはハコベラをやっている大人になれて、私は私でいれて、本当に幸せだな、と思いました。

沢山話をしました。
私のこれまでの人生のことや、間違えたこと、そして演劇のことも話しました。

私は飲み屋で自身の演劇論や夢の話をすることが好きではありません。夢などないし、そもそもが、自分の話をするのがあまり得意ではないのですが、この日はなんだか話が止まりませんでした。

そんな売れたい訳じゃないし、有名になりたいわけでもない、私は私が納得する私になりたいし、演劇がしたいのだ、などという、普段は絶対しないような、熱い話もしました。

そんな私の幼稚な話を小林さんは、上から説教するわけでもなく、下から持ち上げるわけでもなく、バカにするでもなく、私の目線で、小林さんの目線で、聞いてくれました。

すごく気持ちのいい人だな、と思いました。

話がひと段落したのち、小林さんは「ところで愛里、グラビアをやれば?」と言いました。
私は「グラビアはやりません」と答えました。



4/29

彼氏が「愛里と結婚したら覚悟が決まるから結婚してほしい」とプロポーズしてきました。

彼氏とは5年くらい一緒に住んでいるのですが、演劇をしています。
というより、彼氏が演劇をしに上京したからついてきた、という感じです。

覚悟、というのはつまり、私のことや子どもができたときに、養っていかなければならず、そうなると役者で売れなければならない、もしくは売れなかった場合のことを考えなければならない、その見切りをつける「覚悟」ができる、諦める「覚悟」ができる、ということでした。

こんなクソみたいなプロポーズ初めてみたので、「こんなクソみたいなプロポーズ、初めてみたわ」と断りました。

はやく、男が養わないといけないとか、
長く付き合った男女は結婚すべきだとか、
決めつけの時代が終わればいいなと思います。彼氏みたいなひとが、自由に好きなことができる世の中になればいいな、とも思います。

ただ、彼氏が婚約指輪を用意していなかったのはいいなと思いました。



4/30 

職場が引くほど忙しかったです。平成が最後でした。


5/1 

アベンジャーズ エンドゲームを観ました。
ネタバレをしたくて仕方がありません。

母親から、実家に帰ってこいとLINEが来ていました。

実家には5年くらいもう帰っていません。
正直、自分の家族のことはあまり好きではないので、帰りたくありませんが、今年は顔くらい出してもいいのかな、と思います。

サヨナランドリーの公演情報がでました。
夏に舞台に出ます。
だーまえが主宰の劇団です。
ありがたいことに、ここ3年くらい毎年出演させてもらっています。

この舞台が終わったら、しばらくは自分の人生についてきちんと考える時間にしたいな、と思っているので、誰かと一緒になにかをつくる、という活動はやめにするかもしれません。(ハコベラはやります)

詳しいことは割愛しますが、4年前まではほぼほぼ家も仕事もない状態だったのが、いまでは人間の暮らしが普通にできています。そうなってくるとやはり、欲が出てきてもっとちゃんと人間になりたいなと思ってしまいます。

そんな中でのサヨナランドリー、全力で挑もうと思いますので、関東にお住いの方はぜひいらして下さい。





サヨナランドリー第3回公演
「宇宙人になった僕」作・演出 前田芽衣子

【日時】
2019年8月24日(土)14:00/18:00
2019年8月25日(日)14:00/18:00
上演は90分を予定しております。
会場は開演の30分前です

【チケット】
前売 2800円
当日 3000円
ペア割 2500円

【役者】
野田春香
片渕高史(ハコベラ)
愛里(ハコベラ)
安藤江莉佳
青木裕基(ハコベラ)

【場所】
中野RAFT(東京都中野区中野1-4-4 1F)

【アクセス】
JR線・大江戸線「東中野駅」西口から徒歩13分
丸ノ内線・大江戸線「中野坂上駅」A2出口から徒歩10分