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第3話 私立探偵ボブ

〜このえほんを いもうとのクリスタに〜

 

クリスタ「兄さま!お兄さま!」

エリック「どうしたんだい、クリスタ。」

クリスタ「兄さま、眠れないの・・・。」

エリック「oh …どうしたって言うんだいクリスタ。あしたは隣町のジェイコブとの、たいせつなデートだろう。」

クリスタ「まあいやだわ、兄さまったら。ジェイコブとあたくしはそんなんじゃなくってよ。」

エリック「いけないなクリスタ、嘘つきは政治家のはじまりってね。この前ママにせがんだ小遣い、あれはジェイコブに贈るプレゼントを買うためだろう。」

クリスタ「まあいやだわ、兄さまったらなぜそれを・・・」

エリック「ぼくの観察眼は人一倍さ。なにせぼくは絵本作家なんだよ、クリスタ。」

クリスタ「まあいやだわ、まるでスパイね。」

エリック「ショーン・コネリーも顔負けのジェームズボンドっぷりだろう。」

クリスタ「fufufu…いやだわ兄さまったら。すべてお見通しってわけネ・・・そうよ、お小遣いはジェイコブのためにつかったわ。ジェイコブったら眠ってる最中にいびきが止まるのよ。あたくし、恐ろしくっておちおち隣で眠れやしないの。だから彼のために睡眠時のマウスピースとブリーズライトを買ったのよ。」

エリック「なんだって!もう一緒に眠ることもあるのかい!近頃のお子さまは一体どうなっているっていうんだい!?」

クリスタ「まあいやだわ!兄さまったら!あたくし兄さまが思ってらっしゃるよりもずっとお子さまじゃなくってよ!」

エリック「へえ大したことを言うもんだ。つい最近まで、ひとりでお花も摘みに行けなかったお嬢様だったっていうのに。」

クリスタ「まあ!いやだわ!も〜〜〜〜あたくし怒ったわよ〜〜〜〜〜(とっても怒っている)」

エリック「オーケーオーケー、ごめんよ、悪かった。」

クリスタ「もう・・・いやだわ・・・・でも兄さま、あたくしとてもジェイコブのことが心配で・・・やっぱり一度公的な医療機関に看てもらったほうがいい・・・」

 

もぐもぐ

もぐもぐ

 

クリスタ「兄さま?なぜシーツを咀嚼なさっているの?」

エリック「無論。腹が減ったからさ。」


もぐもぐ

もぐもぐ

 

クリスタ「兄さま!お止めになって!!」


もぐもぐ

もぐもぐ


クリスタ「兄さま!!!!!」


もぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・・・


「・・・ボブ!起きて、起きるのよボブ・・・・!!」


かすかな呼び声で、深い意識の奥底からボクは目を覚ました。


「ハッッ、、ここは・・・!?ボクはエリック・カール!?」 


どうやら眠ってしまっていたらしい。窓の外はもうすっかり暗くなっている。 


「ふざけた事言うんじゃないわよ。あの子達もうとっくに帰ったわよ。」


そう言いながら事務所の手狭なキッチンで、グリーンティーをカップに注ぐ彼女は、ボクの相棒、元キャッツ・アイのキャシーだ。


この探偵事務所の表の顔がこのボクとするのならば、彼女は裏の顔。ボクが仕事を引き受けて、彼女が街で情報を集める。情報のためなら時に危ない橋だって渡る彼女。だからこの事務所では、僕がいる時だけしか姿を現さない。顔が割れてしまっては、命を狙われる危険だってあるからネ。


「悪いね・・・ここのところあまり眠れていないのさ。fufufu…それにしてもおかしな夢だったよ・・・しかし最近、同じ夢ばかり見る・・・ボクが絵本作家になる夢でね、ナンとも奇妙なんだよ。どう思う?キャシー。」


「あら、いくらあたしが夜専門の情報屋だからって、おねんね中の夢の中までは捜索できないわよ。」


ずる賢く、それでいて艶っぽい笑みを浮かべ、彼女はグリーンティーを口にする。 


キャシーは、キャッツ・アイらしく行動時間は夜だけと決めている。なぜ夜だけなのかというと、昔のキャッツ・アイのアニメのオープニング映像では大体夜の街ばっかり出てくるからである。昼間も行動するキャッツ・アイがいるのだとすれば、当然アニメのオープニングでも昼間の街の映像が出てきても良さそうなものだが、見事に夜の街の映像ばかりである。ということはキャッツ・アイは夜にのみ行動するものだという考えに至るのが自然な流れだ。だが、実際にアニメキャッツ・アイの本編を見たことは一度も無いので、果たして実際にキャッツ・アイが夜間しか行動しないものなのかどうかは、ボクたちの知るところでは無い。


そんなことを考えながら、窓の方を見る。夜の街はネオンがやかましく点滅し、道行く人々もどこか浮き足立っているように見える。この窓からそんな風景を見下ろす度に、ボクもこの街の一部なんだという気がしてくる。そう、ボクはこの街で、この街の住人とともに、同じように・・・生きているのだ・・・そう、ここ、WAKAMATSU区・・・。


ふと夜のネオンにまぎれて、街の中のある看板が目に入った。その時だ。


「そうか!そうだったのか・・・!!!」


「どうしたの、ボブ。」


キャシーが尋ねる。


「こうしてはいられない!あの看板を見て分かったんだよ!すべての謎と、アオキの居場所、そしてボクが何故ここ最近絵本作家になる夢ばかり見るのかがね!!!」 


事件の手がかりとなった看板とは一体!!!!


次回、すべての謎が解き明かされる!!!! 


 (片渕)